IPCLとは?ICLとの違いは?

IPCLは、EyeOL UK社が開発した新しい後房型有水晶体眼内レンズです。
2014年にV1.0が発売され、2017年にはセントラルホールを備えたV2.0が登場しました。
2025年4月には厚生労働省の承認を取得し、日本でも正式に使用できるようになりました。
このコラムでは今注目のIPCLを医師がわかりやすく解説します。
この記事を書いてくれたのは...
IPCLの基本情報
IPCLとはImplantable Phakic Contact Lensの略となります。
2014年にV1.0、2017年にV2.0が販売されており、現在はV2.0が主流です。
IPCL V2.0は大きく2種類に分けることができます。
1. 単焦点IPCL V2.0
英語ではモノフォーカル(単焦点)を呼ばれます。
近視/遠視/乱視に対応することが可能です。
乱視に対応できるレンズとできないレンズでは構造が変わるので、費用が変わることも多いです。

2. 多焦点IPCL V2.0
英語ではマルチフォーカル(多焦点)を呼ばれます。
多焦点の場合は近視/遠視/乱視に加えて老眼に対応することができます。
単焦点レンズと同じように、乱視に対応できるレンズとできないレンズでは構造が変わるので、費用が変わることも多いです。

↓IPCLの詳細情報
- 製造・販売:EyeOL UK社
- 発売:2014年 V1.0、2017年 V2.0(セントラルホール付)
- 実績:CEマーク取得、40カ国以上・10万件以上の実績
- 日本での使用:2015年~、2025年4月厚労省承認
IPCLの公式サイトはこちら
IPCL V2.0の特徴

1. レンズタイプ
先ほど、IPCL V2.0は老眼に対応できない「単焦点」と老眼に対応できる「多焦点」の2種類に分けることができると紹介しました。
実はその2種類の中でもさらに2つ(合計で4種類)に分けることができます。
その分け方は
「乱視に対応できるかどうか」になります。
IPCL V2.0には4種類のレンズタイプがあり、幅広い年齢の患者様のニーズに対応することが可能となっています。
2. サイズ展開
レンズ自体の大きさ(サイズ)には11.0mm~14.0mmまで0.25mm刻みで13種類があります。
患者様お一人おひとりに最適なレンズを作成でき、術後のレンズの位置ずれのリスクを最小限に抑えることが可能となります。
3. 素材とデザイン
IPCLは「ハイブリット親水性アクリル素材」でできており、加工がしやすく、細かな工作が可能な素材です。そのため、ICLよりも見え方の質が高いとされています。
眼内でレンズを安定して固定するため6つの支持部(ICLは4つ)をもつ構造をしており、さらに房水の循環を促進する7つのホール(ICLは1つのみ)が設置され、白内障や緑内障の発症予防に配慮され安全性を向上させています。
4. 多焦点レンズによる老視矯正
これまでも説明されているように、多焦点IPCLは老眼対応のレンズとなります。
40代など老眼の症状が出てきやすい年代の方にはおすすめの治療となります。
IPCLのメリットとデメリット
メリット
- 幅広い年齢層に適応
白内障などの疾患のない中高年層において、老眼治療としても最適です。 - 老眼矯正が同時に可能
IPCLは多焦点タイプ(Presbyopic IPCL V2.0)を使用することで、遠方・近方ともにピントが合い、老眼鏡の使用頻度を大幅に減らせます。 - 豊富な度数・サイズ・タイプに対応
近視は-30Dまで、乱視は+10Dまで対応可能。さらに13種類のサイズ展開があり、一人ひとりに最適なカスタムレンズを選択できます。 - 厚労省承認済みで安心
2025年4月に厚生労働省の承認を取得。世界40カ国以上で10万件以上の実績があり、今後は日本国内でも広く普及が期待されます。
デメリット
- 完全な老眼矯正は難しい
多焦点タイプのIPCLは遠くから近くまで幅広い距離にピントが合いやすくなり、生活の質の向上が期待できる治療ですが、老眼の矯正には限界があります。
若い20代の頃のような完全にクリアな見え方になるわけではありません。多焦点IPCLは老眼の不便さを「ある程度補助」するものに過ぎず、決して万能ではありません。
適応条件と禁忌
適応条件
- 21歳以上
- 近視 -6D以上の中等度近視(慎重適応:-3D~-6D)
- 屈折が1年以上安定していること
禁忌
- 21歳未満
- 浅前房(2.8mm未満)、角膜内皮障害
- 妊娠中・授乳中
- 白内障・緑内障などの眼疾患
- 重度の糖尿病や膠原病などの全身疾患
IPCLのまとめ
IPCLは、ICLに次ぐ新しい屈折矯正手術の選択肢です。特に老視矯正に対応できる多焦点レンズがある点が大きな特徴。2025年に国内承認されたことで、今後ますます普及が期待されます。