ICLは入れてもスポーツできる?水泳・格闘技の再開時期を医師が解説
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術を検討する際、多くの人が気にするのが「術後のスポーツ」です。
特に、ジムでの筋トレやランニング、あるいは水泳や格闘技などの激しい運動をいつから再開できるのか、不安に感じる方は少なくありません。
結論から言えば、ICL手術後もスポーツを楽しむことは十分に可能です。しかし、目の安全を守るためには、適切な休息期間と段階的な再開が必要です。
本記事では、種目ごとの再開目安や、医学的なリスク管理について詳しく解説します。
この記事を書いてくれたのは...
ICL術後にスポーツは再開できる?
ICL手術を受けた後でも、基本的にはあらゆるスポーツを再開することが可能です。
しかし、手術直後からすぐに全力で運動できるわけではありません。なぜなら、目には手術による小さな傷があり、それが完全に治癒するまで待つ必要があるからです。
つまり、再開には「段階的なステップ」が求められます。一般的に、術後数日は安静が必要です。その後、軽い運動から始め、徐々に強度を上げていくのが理想的です。医師の許可が出るまでは、自己判断での再開は避けてください。適切な期間を置くことで、長期的に安全にスポーツを楽しめるようになります。
1. なぜスポーツに制限が必要なのか
スポーツ制限の主な理由は、感染症予防とレンズの安定化です。
手術では角膜(黒目)の縁を約3ミリ切開します。この傷口(創口)が塞がる前に汗やプールなどの不衛生な水が入ると、眼内炎という重篤な感染症を起こすリスクがあります。
また、眼内に入れたレンズが組織に馴染むまでには一定の時間が必要です。さらに、激しい運動による血流増加や振動は、デリケートな術後の目に負担をかけます。したがって、傷口が閉鎖し、眼内の状態が安定するまでは、運動を控える必要があるのです。
2.ICLレンズはズレる?衝撃と眼圧変動の影響
ICLは虹彩(茶目)の後ろにに固定されます。そのため、コンタクトレンズのように簡単にズレたり外れたりすることは稀です。しかし、術後早期はまだレンズの位置が完全に定着していません。
この時期に頭部に強い衝撃を受けたり、激しくいきんで眼圧が急上昇したりすると、レンズが回転したり位置が動いたりする可能性があります。
特に、乱視用レンズの場合は軸がズレると見え方に影響します。したがって、組織が安定するまでは、衝撃や過度な眼圧上昇を伴う動きは避けるべきです。
スポーツ別|再開できる時期と注意点
スポーツの種類によって、目にかかる負担やリスクの種類は異なります。そのため、一律に「いつからOK」とは言えず、競技特性に応じた再開時期の目安が存在します。ここでは、一般的な目安と注意点を解説します。
ただし、回復には個人差があります。必ず担当医師の検診を受け、許可を得てから再開するようにしてください。無理な再開は、視力回復の遅れや合併症の原因となります。
1.ランニング・軽い筋トレ(ジム)はいつから?
一般的に、軽いジョギングやストレッチ程度であれば、術後1週間後から可能です。しかし、汗が目に入らないよう十分に注意する必要があります。一方で、重量を扱うウェイトトレーニングや激しい有酸素運動は、もう少し慎重になるべきです。
重いものを持ち上げる際、顔に力が入ると眼圧が一時的に上昇します。術後早期の眼圧変動は傷口に負担をかけるため、本格的な筋トレは術後2週間〜1ヶ月程度空けることが推奨されます。つまり、最初は軽い運動から始め、徐々に負荷を戻していくのが安全です。
2. 水泳・サウナ・温泉|感染リスクと再開時期
水泳やサウナ、温泉は、最も慎重な判断が求められる活動です。その最大の理由は「感染リスク」にあります。プールの水や温泉、公衆浴場には、目に見えない雑菌が含まれている可能性があります。
術後の傷口が完全に塞がっていない状態で汚染された水が目に入ると、深刻な感染症につながりかねません。そのため、顔を水につける行為は、通常術後1ヶ月程度は禁止されます。さらに、ゴーグルを着用する場合でも、着脱時の圧力に注意が必要です。医師の最終確認が済むまでは、水場への接近は控えましょう。
3. 格闘技・球技|外力による眼圧変動とケガのリスク
ボクシングや柔道などの格闘技、あるいはボールが目に当たる可能性がある球技は、特に注意が必要です。これらは目に直接的な衝撃が加わるリスクが高いためです。一般的に、対人競技の再開は術後1ヶ月以降が目安となります。
しかし、顔面への打撃がある格闘技の場合、さらに長い期間(3ヶ月程度)様子を見ることもあります。万が一、目に強い打撃を受けると、レンズの偏位や眼内出血のリスクが生じます。したがって、再開時は保護メガネを使用するなど、物理的な防御策を講じることが重要です。
スポーツ選手・格闘家はICLできる?適応と判断基準
プロのアスリートや格闘家でも、ICL手術を受けるケースは増えています。コンタクトレンズのトラブルから解放されるメリットが大きいからです。しかし、全ての選手に適応となるわけではありません。
競技の種類や目の状態によって、ICLが最適な選択肢かどうかの判断は異なります。ここでは、アスリートが検討する際の適応基準やメリットについて解説します。
強度の衝撃がある競技でICLが向くケース
激しい接触がある競技では、コンタクトレンズが外れたりズレたりするリスクが常にあります。試合中に視力を失うことは致命的です。一方で、ICLは眼内に固定されているため、通常の動きで外れることはありません。
この「裸眼と同じような感覚」でプレーできる点は、アスリートにとって大きなメリットです。ただし、顔面への直接打撃が頻繁にある競技(ボクシング等)では、レンズ破損や眼内損傷のリスクを考慮し、慎重な判断が必要です。医師と競技特性を十分に話し合うことが不可欠です。
適応検査で確認するポイント
手術が可能かを判断するために、精密な適応検査を行います。特に重要なのが「前房深度」です。これは角膜と水晶体の間のスペースのことで、レンズを入れる十分な広さが必要です。
また、レンズを固定する土台となる「虹彩」の形状も確認します。
さらに、乱視の程度も重要です。強度の乱視がある場合、レンズの軸合わせがシビアになります。
つまり、これらの条件がクリアされ、かつ競技によるリスクが許容範囲内である場合にのみ、手術が適応となります。
まとめ|ICL後もスポーツは再開できる
ICL手術を受けたからといって、スポーツを諦める必要はありません。むしろ、メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放され、より快適に運動を楽しめるようになります。しかし、重要なのは「焦らないこと」です。
術後の目は回復途中にあります。医師の指示に従い、まずは散歩などの軽い運動から始め、徐々に強度を上げていきましょう。感染予防と衝撃回避を徹底すれば、ICLはあなたのスポーツライフを強力にサポートしてくれるはずです。
まずは適応検査で、自身のライフスタイルについて相談してみてください。
参考文献
・Rewiew of optometry(詳しくはこちら)





