ICLは安全?白内障や合併症リスクと術後10年以上のデータを解説

ICLは安全?白内障や合併症リスクと術後10年以上のデータを解説

ICL手術は、近視や乱視を矯正する屈折矯正手術の一つとして広く認知されています。

しかし、「目に異物を入れる」という性質上、長期的な安全性合併症リスク、特に白内障への懸念を持つ方も少なくありません。

本コラムでは、医学的根拠に基づき、ICLの長期安全性とリスクについて、医師監修のもとでわかりやすく解説します。

旧型レンズと現行の「ホールICL」との違いを明確にし、長期にわたってICLを安全に維持するための重要なポイントをお伝えします。

この記事を書いてくれたのは...

ICLって本当に安全?

ICL安全

ICL手術は、角膜を削るレーシックとは異なり、小さな切開からレンズを挿入する可逆的な手術です。

しかし、手術である以上、リスクはゼロではありません。

1. ICLの安全性に関する3つの大きな懸念

ICL手術(眼内コンタクトレンズ)には主に3つの懸念点があると考えています。

第1の懸念は白内障です。旧型ICLでは長期的に白内障(レンズの濁り)が進行するリスクが指摘されました 。

第2の懸念は高い眼圧(緑内障)です。手術で目の中にレンズを入れると房水の流れが妨げられ、眼圧上昇につながる可能性があります 。

第3の懸念は角膜内皮細胞の減少です。角膜の透明性を保つ内皮細胞への悪影響や、長期間異物が残ることへの不安もあります。

2. 旧型レンズで起こった合併症と現行レンズ(ホールICL)の違い

ICLの合併症リスクを理解する上で、旧型レンズ(非ホールICL)と現行のホールICLの違いを知ることは不可欠です。

旧型レンズは、レンズと水晶体の間隔(Vault/ボルト)が狭すぎると、房水(眼内の栄養液)の流れが悪化し、白内障(特に前嚢下白内障)を誘発しやすいという欠点がありました。

しかし、2011年頃に登場したホールICL(中央に小さな穴が開いたレンズ)は、この穴を通じて房水がスムーズに流れる構造になっています。

その結果、房水循環が改善され、水晶体への栄養供給が保たれるため、白内障リスクが大幅に低減しました。

つまり、現在のICL手術は、このホールICLが主流となっており、安全性が格段に向上しています

3. ICLは長期間、目に残り続けても問題ないのか?

ICLの素材は「コラマー」と呼ばれる、生体適合性の高い特殊な素材でできています。

これは、目の中で長期間にわたり異物として認識されにくい素材です。

そのため、体内で変質したり、拒否反応を起こしたりするリスクは極めて低いとされています。

さらに、長期的な臨床データでは、10年以上にわたりICLが安定して目に留まり、視力矯正効果を維持していることが確認されています。

もちろん、手術後もレンズは目に残り続けますが、適切な定期検診を受け、レンズの位置や眼の状態をチェックすることで、長期的な安全性を確保できます。

したがって、ICL自体が生涯にわたって目に残り続けても問題ない設計となっています

ICLと白内障・緑内障の関係性

ICLは目の構造の奥(虹彩の後ろ、水晶体の前)に挿入されるため、白内障緑内障といった長期的な眼病リスクとの関係について専門的な理解が必要です。

こちらは詳しく知りたい方のために書いたので、飛ばして頂いても構いません。

1.ICL手術が白内障を引き起こす医学的メカニズム

ICLが白内障(特に前嚢下白内障)を引き起こす可能性は、レンズが水晶体の前面に物理的に接触したり、接触に近い状態にあることで、房水循環(眼内の栄養液の流れ)が妨げられることに起因していました。

つまり、水晶体への栄養供給が不十分になることで、水晶体が濁ってしまうのです。

しかし、これは主に旧型レンズでの話です。一方で、現行のホールICLでは、レンズ中央の穴に加え、レンズが虹彩に支えられて水晶体との間に適切な隙間(Vault/ボルト)を保つように設計されています。

そのため、接触リスクが大幅に低減し、それに伴い白内障のリスクも著しく低下しています。

2. ホールICL登場による「房水循環」改善とリスクの軽減

hole ICL

ホールICLの最も画期的な点は、レンズ中央に設けられた0.36mmの小さな穴です。

この穴があることで、手術前に虹彩切開術(レーザーで虹彩に穴を開ける処置)を行う必要がなくなりました。

さらに重要なのは、この穴が房水循環を劇的に改善させたことです。

つまり、虹彩とレンズの隙間だけでなく、レンズそのものを通って房水が循環することで、眼圧の変動や、水晶体への栄養不足を防ぐことができます。

そのため、旧型レンズに比べて緑内障(眼圧上昇によるもの)や白内障のリスクを大きく軽減することが可能となりました。

3. 将来、白内障になった場合のICLの取り扱い

ICL手術を受けた方が、加齢などにより将来的に白内障になった場合でも、ご安心ください。

ICLは可逆的な手術であり、挿入したレンズは取り出すことが可能です。

つまり、白内障手術を行う際には、まず挿入されているICLを安全に取り出し、その後、一般的な白内障手術と同様に、濁った水晶体を吸引・除去し、新しい眼内レンズ(白内障治療用のレンズ)を挿入します。

そのため、ICLが将来の白内障治療の妨げになることはありません。

長期的な安全性を高めるためのポイント

医師が推奨する術後の定期検診の頻度

定期検診

ICL術後は計画的な定期検診が強く推奨されます 。

一般的な頻度は、手術翌日・1週間後・1ヶ月後・3ヶ月後までが初期集中検診期間です 。

この期間で順調に回復しているか確認します。

その後は6ヶ月後・1年後に検診を行い、以降は年に1回の定期検査が望ましいとされています 。

検診時の主なチェック項目は以下の通りです。

視力と屈折度:裸眼視力が安定しているか、度数にズレがないか確認します 。

眼圧:ICL術後に眼圧が上昇していないか測定します 。

角膜内皮細胞数:スペキュラーマイクロスコピーで角膜内皮細胞の密度を測ります 。これは長期的な安全性評価に重要です。

それに加えてICLレンズの位置(Vault):レンズと虹彩・水晶体の距離をOCT等でチェックし、適正なVaultが保たれているか確認します 。

これらの検査により、合併症の兆候を早期に発見できます。そのため定期検診を欠かさないことがICLを安全に使い続ける秘訣です。

日常生活での注意点

ICLを長期にわたり安全に保つために、日常生活で過度に神経質になる必要はありませんが、いくつかの注意点があります。

最も重要なことは、目を強くこすったり、叩いたりするなどの物理的な衝撃を避けることです。

なぜなら、強い衝撃はICLの位置ずれや、眼内での炎症を引き起こす可能性があるからです。

さらに、紫外線は白内障の一因ともされるため、屋外ではUVカット機能付きのサングラスを着用することも有効です。

そして何よりも、年に一度の定期検診を欠かさないことが、ICLを「一生もの」にするための最大の注意点です。

まとめ|医師から見たICLの安全性と信頼性

ICLは、特に現行のホールICLの登場により、その安全性と信頼性が飛躍的に向上しました。

過去のデータで懸念されていた白内障や緑内障のリスクは、房水循環を改善する革新的な構造によって大幅に軽減されています。

もちろん、手術である以上、合併症のリスクはゼロではありません。

しかし、術前の精密な適応検査と、術後の医師が推奨する定期検診を継続することで、万が一の事態を早期に発見し、適切に対応することが可能です。

つまり、ICLは長期的な視力矯正法として、非常に高い安全性と有効性を持つ信頼できる治療選択肢と言えます。

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参考文献

・Rewiew of optometry(詳しくはこちら