ICLで黒目が大きくなる?見た目の変化を医師が徹底解説


ICL黒目

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、近視や乱視を矯正する視力回復法として注目されています。

しかし、「ICLをすると黒目が大きくなる」「見た目が変わってしまうのでは」という噂を聞き、不安を感じている方もいるかもしれません。

本記事では、この「ICLで黒目が大きくなる」という疑問に対し、眼科の医学的な根拠に基づいて徹底的に解説します。ICLの構造と挿入位置から、なぜ外見が変わらないのかを説明します。さらに、なぜそのような誤解が生まれるのか、その原因と、夜間に気になるハロー・グレアとの違いも明らかにします。

この記事を書いてくれたのは...

ICLで黒目は大きくなる?結論とその根拠

ICL悩む女性

ICL手術によって、黒目の物理的な大きさが変わることはありません。

これは、ICL(眼内コンタクトレンズ)の挿入位置が、黒目の大きさや色を決めている組織である「虹彩(こうさい)」の後方にあるためです。つまり黒目の大きさに関与しない位置に挿入されています。

したがって、ICLが直接黒目のサイズを変化させることは原理的に不可能です。

しかし、一部の人が「大きくなった」と感じる背景には、見え方の変化や光の反射など、いくつかの要因が関連しています。この誤解の正体を正しく理解することが重要です。

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そもそも黒目とは?

ICL解剖

そもそも「黒目」とは、一般的に目の中心にある色のついた部分、すなわち「虹彩」と、その中央にある開口部である「瞳孔」を指す総称です。虹彩は、カメラの絞りのように働き、光の量に応じて瞳孔の大きさを調節します。

そして、ICLは、この黒目の裏側、具体的には虹彩と水晶体の間に挿入されます。つまり、ICLは黒目の色や大きさを規定する虹彩という組織には直接大きな影響を及ぼさない位置に置かれますしたがってICL手術が黒目の物理的なサイズや色に変化を与えることはありません。

なぜ「黒目が大きく見える」という噂が生まれたのか

ICL手術後に「黒目が大きくなった気がする」という感覚を覚える人がいるのは事実です。

これは、実際に黒目が物理的に大きくなったわけではなく、視覚的な要因や見え方の変化を「黒目の変化」と誤認しているケースが大半です。特に、術前の強い近視が解消されたことで、裸眼の状態が「新しい日常」となり、以前の視覚体験との比較から錯覚が生じやすくなります。

この誤解を解消するためには、どのような変化がそのように感じさせているのかを理解する必要があります。

1.瞳孔径の変化を黒目の変化と誤解するケース

黒目を形成している「瞳孔」は、明るさに応じてその大きさを変化させます。暗い場所ではより多くの光を取り込もうとして瞳孔は拡大し、明るい場所では光を抑えるために縮小します。ICLの光学部分の直径は、通常、夜間に拡大した瞳孔の直径よりもわずかに小さいことがあります。

そのため、特に暗い場所では、瞳孔が拡大した際にICLの縁が光をわずかに散乱させることがあります。この現象を、一部の人が「黒目の部分が光を反射して大きく見えている」と錯覚することがあります。しかし、これは瞳孔のサイズが変わっただけであり、黒目の大きさ自体が変わったわけではありません

2. コンタクト経験者が感じる“見え方の変化”との混同

ICLコンタクト結膜充血

従来のコンタクトレンズ、特にハードコンタクトレンズは、角膜(黒目の表面)に直接装用されます。

一方、ICLは目の内部、虹彩の裏側に挿入されます。コンタクトレンズを装用している間は、角膜への酸素供給がわずかに制限されることや、レンズの存在自体で、白目が充血したり、黒目の透明感が低下して見えたりすることがあります。

したがって、ICL手術によってコンタクトレンズから解放されると、これらの角膜表面への影響がなくなるため、白目の充血が改善し、黒目本来の透明感が増して見えることがあります。この「黒目がクリアになった」という変化を、「黒目が強調され、結果として大きく見える」と誤解する場合があります。

夜間の見え方(ハロー・グレア)との違い|黒目のサイズとは無関係

ハローグレア

ICL手術後に「黒目が大きく見える」という感覚と、夜間のハロー・グレアは、しばしば混同されますが、両者は医学的に異なる現象です。ハロー・グレアは光の異常であり、黒目のサイズが変わるという外見上の変化ではありません。

しかし、ハロー・グレアの発生には、夜間の瞳孔の大きさ(暗所瞳孔径)が深く関わっています。瞳孔がICLの光学部分より大きく開くことで光の散乱が起きるため、両者を区別して理解することが、術後の見え方への不安を解消する鍵となります。

ハロー・グレアの仕組み

ICLハローグレア

ハロー・グレアは、ICLの光学的に有効な部分の外側を光が通過し、散乱することで発生します。これは、カメラのレンズの縁で光が反射・散乱する現象と似ています。一方で、黒目の大きさは、虹彩の直径で決まる物理的なサイズです。

ハロー・グレアは、光の波の性質とレンズの設計によって生じる現象であり、黒目の組織構造や物理的な寸法には影響を与えません。つまり、ハロー・グレアを感じたとしても、それは一時的な視覚現象であり、「黒目が大きくなった」という外見上の変化とは全く関係がないことを理解することが重要です。

瞳孔が大きい人の夜間の見え方と注意点

ICLドライアイ

夜間や暗所では、多くの光を取り込もうとして瞳孔が自然に拡大します。この「暗所瞳孔径」が平均よりも大きい人は、ICLの光学部分の縁が瞳孔の開いた部分に近くなりやすく、ハロー・グレアを感じやすくなる傾向があります。

したがって、ICL手術を検討する際、特に夜間の運転などを重視する方は、事前の適応検査でこの暗所瞳孔径を測定することが非常に重要です。直径が大きい場合は、より光学部分の広いICLレンズを選択するなど、術後のハロー・グレアを軽減するための対策を医師と相談することができます。

まとめ|ICLで黒目は大きくならない。誤解の正体を理解しよう

ICL手術を検討している方が抱く「ICLで黒目が大きくなるのか」という疑問に対する医学的な回答は、「黒目の大きさは変わりません」です。ICLは、黒目の大きさを決める虹彩に触れない位置(後房)に挿入されるため、物理的な外見の変化は起こりません。

つまり、「大きくなった」という感覚は、白目の充血改善による黒目の強調や、夜間のハロー・グレアという視覚現象を「見た目の変化」と誤認しているケースがほとんどです。ICL手術は、視力回復を目的としたものであり、見た目に影響を与えるものではないことを理解し、安心して手術に臨みましょう。

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参考文献

・日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)「有水晶体眼内レンズ(ICL)情報サイト」(詳しくはこちら