ICLの追加料金に注意!見落としがちな費用ポイントを医師が解説
ICL(眼内コンタクトレンズ)を検討する際、Webサイト上の「最安値」だけに目を奪われていませんか?
しかし、実際の支払総額は表示価格と異なるケースが少なくありません。
なぜなら、ICLは個々の目の状態に合わせてレンズを選定するオーダーメイド医療だからです。
さらに、術後の安全を守るための検査やケアにも費用がかかります。
本記事では、料金表には書かれない「追加料金」の発生ポイントを、現役医師が徹底解説します。 後悔のない選択のために、ぜひ最後までご確認ください。
この記事を書いてくれたのは...
ICL費用は“手術代だけ”ではない?
ICL手術の費用構造は、単純な外科手術とは異なります。
一般的に表示される料金は、基本的な手術手技と標準レンズ代のみを指すことが多いです。
しかし、患者様の目の状態は千差万別です。 例えば、角膜の形状や乱視の有無により、必要なレンズの種類が変わります。
また、安全性を確保するための術前・術後管理も重要です。 したがって、これらの「個別対応」に追加のコストが発生します。 さらに、医療機関の方針によって、検査費用や薬代を含めるかどうかが異なります。
次の章では、どういった追加費用があるのかを医師が解説します。
見落としやすいICLの追加料金|6つのチェックポイント
ICL治療には、手術代以外にも多くの費用項目が存在します。 しかし、これらは公式サイトの片隅に小さく書かれていることもあります。
ここでは、特に見落としやすい6つの追加料金ポイントを挙げます。
これらを事前に確認することで、想定外の出費を防ぐことができます。
ご自身の予算計画と照らし合わせながら、確認していきましょう。
1.乱視あり(トーリック)レンズの追加費用
乱視がある場合、「トーリックICL」と呼ばれる乱視用レンズが必要です。
通常のレンズとは異なり、このレンズには乱視の軸(角度)を矯正する機能が付加されています。
さらに、手術時にはレンズの軸を個々の乱視軸に正確に合わせる高度な技術が求められます。
そのため、通常のレンズ代に加えて、片目あたり数万円から10万円程度の追加費用がかかることが一般的です。
しかし、乱視を矯正しないと術後の見え方に満足できない可能性があります。したがって、適応検査で乱視の有無と程度を正確に把握することが重要です。
費用を抑えたいからといって、乱視矯正を省くことは医学的にお勧めできません。
2. 適応検査・術前検査の料金
ICL手術を受けるには、詳細な適応検査が必要です。
具体的には、視力検査だけでなく、眼底検査や角膜形状解析などを行います。 また、コンタクトレンズの装用を中止して行う最終的な度数決定検査も重要です。
多くのクリニックでは、これらの検査費用を手術代とは別に設定しています。 一方で、手術代に含まれている場合や、手術を受ける場合は返金されるシステムもあります。
検査費用は数千円から数万円と幅広いため、事前の確認が必要です。 さらに、万が一手術不適応となった場合、検査費だけがかかるケースもあります。 無駄な出費を防ぐためにも、検査費の取り扱いを明確にしておきましょう。
3. 術後の点眼薬・保護メガネなどの物品代
手術が終わった後も、ケア用品にお金がかかります。
まず、術後の感染症や炎症を防ぐために、抗生剤等の点眼薬が必須です。 これらは通常、数種類の目薬を数週間にわたって使用します。また、就寝中に無意識に目をこすらないよう、保護用メガネ(ゴーグル)の着用も指示されます。
しかし、これらの物品代が手術費に含まれていないケースがあります。 術後の安全を守るための必須アイテムですので、これらは必要経費と考えるべきです。
4. 術後検査の通院回数と費用
ICLは「手術して終わり」ではありません。
術後は、翌日、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後といった定期検査が必要です。 これは、レンズの位置ズレや眼圧上昇、感染症の有無をチェックするためです。 多くのクリニックでは、一定期間(例えば1年〜3年)の検診費を手術代に含んでいます。 一方で、検診のたびに再診料がかかる施設も存在します。 また、遠方のクリニックを選んだ場合、通院にかかる交通費も無視できません。
長期的なコストを考えるなら、通院頻度と1回あたりの費用を計算に入れるべきです。 安心できる術後経過のために、通院コストも総額の一部として捉えましょう。
5. 再手術が必要なケースと保証内容の違い
非常に稀ですが、サイズ交換や位置修正などの再手術が必要になることがあります。例えば、レンズのサイズが合わずに眼圧が上がったり、レンズが回転して乱視矯正がずれたりするケースです。
このような場合、保証期間内であれば無料で再手術を受けられることが多いです。 しかし、保証期間を過ぎていたり、保証対象外の理由だったりすると、高額な費用が発生します。 さらに、将来的に白内障手術などでICLを抜去する場合の費用も確認が必要です。
保証内容はクリニックによって大きく異なり、数ヶ月の保証から3年まで様々です。 「安い」と思ったら保証期間が短かった、ということもあります。 万が一のリスクに備え、保証の範囲と期間は必ず詳細にチェックしてください。
6. キャンセル料・予約金などの事務費
契約に関する事務的な費用も見落としがちです。
ICLレンズは基本的に海外からのオーダーメイド発注となります。 そのため、レンズ発注後に患者都合でキャンセルする場合、レンズ代の実費を請求されることが多いです。 また、手術枠を確保するために「予約金」の前払いが必要なクリニックも多いです。 さらに、手術日直前の日程変更に手数料がかかる場合もあります。
一方で、これらは契約書に小さく記載されていることが多く、トラブルになりやすい点です。 仕事の都合などでスケジュールが変わりやすい方は、特に注意が必要です。
契約を結ぶ前に、キャンセル規定や変更手数料について明確な説明を求めましょう。
失敗しないための費用比較|確認すべき契約内容
ここまでの追加料金を踏まえ、賢いクリニック選びの方法をお伝えします。
重要なのは、目先の安さではなく、最終的な支払額とサービスのバランスです。
ウェブサイト上の「最安値」は、あくまで最低限のプランである可能性が高いです。 したがって、複数のクリニックから詳細な見積もりを取り、比較検討することが不可欠です。 また、費用だけでなく、その費用に含まれる安心(保証やケア)の質を見極める必要があります。
ここでは、具体的な比較方法として「総額表示」「保証範囲」の2点に絞って解説します。 これらを基準に選ぶことで、納得のいくICL治療を受けることができるでしょう。
「総額表示」で比較すべき理由
広告の「片目〇〇万円〜」という表記には注意が必要です。
なぜなら、それは乱視なしの標準レンズで、かつ検査費や薬代を含まない価格かもしれないからです。 比較する際は、必ず「手術費+検査費+薬代+乱視費用(必要な場合)」を合算した総額で見ましょう。 また、術後検診がいつまで無料かも含めて計算すると、実質的なコストが見えてきます。
一見高く見えるクリニックでも、全てコミコミの価格であれば、結果的に割安な場合もあります。 逆に、安価なプランに追加料金が積み重なり、予想外の高額になることもあります。
保証期間・保証範囲が費用に与える影響
費用の差は、保証の手厚さに直結していることが多いです。
例えば、保証期間が3年のプランは、1年のプランよりも手術費用が高く設定されていることがあります。 しかし、医学的には術後数年経ってから視力が変化したり、合併症が生じたりする可能性もゼロではありません。 その際、再手術やレンズ交換が無料で行える長期保証は、大きな安心材料となります。 一方で、初期費用を抑えるために保証期間を短く設定しているプランもあります。
ご自身の年齢や目の状態、ライフスタイルに合わせて、適切な保証期間を選ぶことが大切です。 単なる価格差ではなく、「安心料」としての価値を含めて判断しましょう。
まとめ|ICL費用は“トータルの質と安心”で判断する
ICL手術の費用について、追加料金の視点から解説してきました。
大切なのは、提示された金額に「何が含まれ、何が含まれていないか」を正確に把握することです。 乱視矯正、精密検査、術後ケア、そして万全の保証体制、 これらはすべて、あなたの目の健康と、術後の快適な見え方を守るために必要な要素です。
医師の視点から申し上げれば、費用は「安全性と質の対価」と捉えていただきたいです。 納得できる説明と明確な料金体系を持つクリニックを選び、後悔のない視力矯正を実現してください。
参考文献
・日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)「有水晶体眼内レンズ(ICL)情報サイト」(詳しくはこちら)





